津村 記久子著『苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある? 』(2022)ちくまQブックス

書き出しが難しいと思ったら、まずは思い出したい言葉です。

「とにかくその作文でメインとなっていることについて文に書いてしまうと、書き出すことはできる」(p.052)

書き出し

この引用の第5章は「書き始めてみよう」です。引用の前では「書き出し」という言葉が入った書き出しの1文が4つ例示されています。引用の後では「書き出し」という言葉を避けた1文が3つ例示されています。読んでみるとたしかに、後者は分かりにくい書き出しになっています。

作文を山登りにたとえると(p.015)

とありますが、初心者コースの書き出しは文章が得意でないならば、これから書く内容を宣言した書き出しがおすすめということです。

メモを取る

「メモを取るな」と言われたら、わたしの文章を書く仕事の質は、冗談ではなく10%以下まで落ちるように思います。(p.40)

つまり、現状メモを取っていない人の場合は日常的にメモを取るだけで「文章を書く仕事の質が10倍以上になる」可能性があるということです。メモを取りましょう。

メモを取ることと自立の関係

 メモなしメモあり
話を聞いてもらう人必要不要
整理してくれる人必要不要
他者との関係依存自立

子供がお母さんに話しながら作文を書くように、相談と称して自分の話を聞いてもらったり、とりとめのない話を「それって、つまり~ということだよね」とまとめてもらったり。一人ではなかなか文章を書くことは難しいものです。

メモには「今の自分、未来の自分に話を聞いてもらうという役割(p.048)」があります。時間軸の異なった自分に頼るのであれば、自立といえるでしょう。

ヘタなメモ術のビジネス書より、よっぽどメモを取る気持ちになる本でした。

苦手から始める作文教室 ─文章が書けたらいいことはある?